心の染み

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コンコンッ‥‥ 「次、出番お願いします。」 「あっ、はい。」 スタッフに呼ばれる。 あぁ、話が途中になってしもた‥ ダルそうに歩き始めると、後ろから 「今日、一緒に飯どう?‥‥話聞いてほしいねん。」 「あぁ、ええょ‥」 まだ、引きずるンかい‥‥ これ以上惨めな気分あじあわせんとってや‥‥ 今までやってそうや、振られたッて、ゆうたら俺ん家来て‥‥ 酔った勢いで、「慰めてや‥」ッて、抱きついて 「俺には井本しか居らん」ッて、ゆうて、ほっぺにキスしたり‥‥ そのくせ、次の日には全然憶えてへん。 アイツの事を否定せんと、背中を擦ってやって、自信を持たせて、‥‥ ‥単に、慰め方を知ってる。それだけや。 ‥都合のええ友達や‥‥ なんやねん。 折角、忘れてしまぉうって思ってンのに‥‥‥ せやよな‥‥もう昔の話や。 アイツと付き合ってたんは‥‥ コイツは俺のもんやッて、ずっと思ってた。 ‥自惚れてたんや。 いつも傍に居って、いつまでも俺だけを愛してくれるって、信じてた。‥ コンビを組んだ時に藤原にゆわれてショックやった。 「漫才を真剣にやんやったら、‥ 別れよう。‥」 ホンマにショックやった‥‥ 後はなんも憶えてへん。 ただ、泣きあかしたのだけ憶えてる。 ‥なぁ‥あん時の心に付いたら染みがとれへんねん。 段々と、滲んで大きなってンねんで。
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