しかめっ面

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外に出ると人気も疎らになり、雨もひとまず止んでいた。 街路樹は雨の雫を身に纏って街灯りを反射していた。 俺が先に歩き始めると、眼鏡を外して、大きく伸びをする。 そして、ポツリと‥ 「綺麗や‥‥」 「ン?‥」 振り返り貴ちゃんを見る。 言葉とは裏腹な、しかめっ面‥‥ そのまま、俺を見て 「あんな、雫ッて車のライトや街灯り反射するやんか‥‥俺、目が悪いからな‥‥ クリスマスのイルミネーションみたいに、滲んでみえんねん。」 「クスッ、嬉しそにゆうてるけどしかめっ面してんで。」 フワッと、微笑む。 「あぁ、しゃぁないねん。焦点合わすのにな‥‥ 気にすんなや。見えにくいだけやから。」 ‥そっなんや、見えへんのやったら 「眼鏡かけたらええやんか‥」 「‥///ええやんか‥」 ‥エッ‥照れてる? 「何でなん?」 「見え過ぎたら困るねん。‥」 「はぁ?」 ‥普通は見えへんかったら困るやろ。 「ええねんて!!‥///」 赤くした耳に雨の雫が落ちる。丁度ライトに照らされてピアスの様に光った。 ‥イルミネーションッて、何かわかる気がする。 綺麗や‥‥ そう思って微笑むと、更にしかめっ面した貴ちゃんが嬉しそに微笑む。 堪らず抱き寄せてしまう。 「眼鏡はポイント高いのに。」 「何のポイントやねん。アホか。」 「クスッ、コンタクトは?」 「しつこいな‥見え過ぎたらどこ見て話したらエエかわからんようになんねん‥‥やから、このくらいが丁度ええねん。‥」 「あらま、意外と照れ屋さんやな。」 「ウッサイんじゃ!‥それにお前が悪いンやんか。‥」 歯切れが悪い。 「俺がか‥」 「‥直ぐ‥‥盛るから‥‥」 消え入りそな小さい声で答える。 「‥?‥」 「‥その、した‥‥あと、俺寝てまう‥やんか。 ‥ズレるねん。‥やから‥‥」 「‥なっ、‥」 予想外の答えに、言葉に詰まる。 「もう、ええやろ!!離せや!」 「ややぁ~。貴ちゃん可愛いもん。」 「じゃかましぃわ!!自分家に帰れ!!」 「いややぁ~!やって、コンタクトしてないって事は‥‥ムフッ。‥」 「ちゃ!ちゃうわ!‥死ね!」 真っ赤な貴ちゃんを時期外れのイルミネーションの中で抱き締めた。 終──────。
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