71人が本棚に入れています
本棚に追加
外に出ると人気も疎らになり、雨もひとまず止んでいた。
街路樹は雨の雫を身に纏って街灯りを反射していた。
俺が先に歩き始めると、眼鏡を外して、大きく伸びをする。
そして、ポツリと‥
「綺麗や‥‥」
「ン?‥」
振り返り貴ちゃんを見る。
言葉とは裏腹な、しかめっ面‥‥
そのまま、俺を見て
「あんな、雫ッて車のライトや街灯り反射するやんか‥‥俺、目が悪いからな‥‥
クリスマスのイルミネーションみたいに、滲んでみえんねん。」
「クスッ、嬉しそにゆうてるけどしかめっ面してんで。」
フワッと、微笑む。
「あぁ、しゃぁないねん。焦点合わすのにな‥‥
気にすんなや。見えにくいだけやから。」
‥そっなんや、見えへんのやったら
「眼鏡かけたらええやんか‥」
「‥///ええやんか‥」
‥エッ‥照れてる?
「何でなん?」
「見え過ぎたら困るねん。‥」
「はぁ?」
‥普通は見えへんかったら困るやろ。
「ええねんて!!‥///」
赤くした耳に雨の雫が落ちる。丁度ライトに照らされてピアスの様に光った。
‥イルミネーションッて、何かわかる気がする。
綺麗や‥‥
そう思って微笑むと、更にしかめっ面した貴ちゃんが嬉しそに微笑む。
堪らず抱き寄せてしまう。
「眼鏡はポイント高いのに。」
「何のポイントやねん。アホか。」
「クスッ、コンタクトは?」
「しつこいな‥見え過ぎたらどこ見て話したらエエかわからんようになんねん‥‥やから、このくらいが丁度ええねん。‥」
「あらま、意外と照れ屋さんやな。」
「ウッサイんじゃ!‥それにお前が悪いンやんか。‥」
歯切れが悪い。
「俺がか‥」
「‥直ぐ‥‥盛るから‥‥」
消え入りそな小さい声で答える。
「‥?‥」
「‥その、した‥‥あと、俺寝てまう‥やんか。
‥ズレるねん。‥やから‥‥」
「‥なっ、‥」
予想外の答えに、言葉に詰まる。
「もう、ええやろ!!離せや!」
「ややぁ~。貴ちゃん可愛いもん。」
「じゃかましぃわ!!自分家に帰れ!!」
「いややぁ~!やって、コンタクトしてないって事は‥‥ムフッ。‥」
「ちゃ!ちゃうわ!‥死ね!」
真っ赤な貴ちゃんを時期外れのイルミネーションの中で抱き締めた。
終──────。
最初のコメントを投稿しよう!