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「願掛け‥?」
「あぁ‥何とか断ちッて、あるやんか。自分の一番好きなもんを断つってやつ。
上杉謙信が女断ち、春日の局が薬断ちしたのとおんなじやつ。」
「酒断ちとかか?」
「そう。俺の一番好きなもんは一裕やから‥‥
一裕との二人きりの時間を断ってん‥‥
ゆわんとごめんな‥ゆうたら効き目薄なる気ィしてん‥‥」
目を離さず俺だけを見ている。
「ン、そやったんや‥‥それでもう大丈夫なんか?」
「あぁ‥一裕が帰った後に病院から電話あって、検査結果聞いて退院。そのまんま、逢いに来てン。
明日まで我慢でけへんかったわ‥」
そうゆうてからまた、優しくキスをする。
「あんまり一裕が可愛く誘うから‥つい、キツイ断り方してしもて
ホンマに、ごめん‥‥」
「ンッ、ええょ。‥ちゃんとした理由があったンやから、かまへん。
それに、俺の事そこまで想ててくれてて‥‥
マジで、嬉しいし‥‥」
寄り添った俺達の周りを四匹の犬達が入れ替わり立ち替わり顔を見に来る。
「お前達も久し振りに逢えて楽しそやな‥」
俺は一匹づつ頭を撫でる。
たかちゃんが立ち上がり玄関に置いた箱を持ってきて、俺に渡す。
「一裕、コイツらに退院祝いのケーキあげてや。」
ペットショップで売っている犬用の可愛いケーキが4つ。
「悪いな、俺らの分は無いけど‥‥」と、頭を掻きながら謝る。
「ン。ええょ、プリンでよかったら俺用意してあんで。クスッ、‥ホンマは今日誘う時にプリンで釣ろうかなって‥‥」と、笑うと
「俺は子供か!」と、笑い返された。
皿にケーキを入れてやるのを、皆尻尾を振って待っている。
普段聞き分けの無い俺の犬もたかちゃんのゆう事はよく聞き並んで待っている。
‥なんや、お父さんが帰ってきた時の子供やんか。
思わず微笑んでしまう。
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