檸檬

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初めて出逢った時に、イケスカン奴ッて、思った。 くそが付くほど真面目で、先生受けがよくて、無断口は叩かない。 頭は悪くなく、どっちかってゆうと、賢い。 かといって、運動神経も悪くなく、腕っぷしもいい。 背も低くなく、ガタイもいい。 顔も悪いわけやなく、どちらかといえば‥‥ 男前の部類に入るんだろう。 ただ、暗いとゆうか‥‥黙ってたら近寄りがたいねん。 ッて、ゆうか‥‥ 俺、睨まれてる気がすんねんな‥ そうゆう訳で、 なっ、気に入らんで当然やろ? けどな‥アイツと目が合って黙って見つめられた時に、俺はアイツの瞳に捕まった気がしたンや‥‥ 教室で騒いでても、友達と巫山戯てても、いつも俺は視線を感じてた。 振り向くと、机に突っ伏したまんまで真っ直ぐに俺を見てた。 ‥‥決して、目を反らさずに まぁ、俺みたいな出来損ないが珍しかったンやろうな‥ クラブも違ったから接点なんかなんもなかった。 それやのに、鬱陶しい終業式をサボって屋上に行くと、アイツがノソノソとやって来た。 「ン?藤原やんか、お前がサボりなんか珍しな‥ 雨降ンで。」 顔を見ると俺が捕まってしまったアイツの瞳が揺れていた。 「あぁ、サボんの初めてかもな。‥井本の姿が見えたから‥‥」 自信無さげな低い声が震えている。 「なんやねん。連れ戻しに来たんか?それやったら無駄やで~、式と掃除終わったら戻るし‥」 素っ気ない俺に、視線を反らさず近づいて、 「ちゃうし、俺‥‥井本と話がしたかってン。 いつも、楽しそやから‥‥一回、ゆっくりと‥‥」 「ふーん、まっええけど‥俺寝るつもりやから、寝たら適当に起こしてや。」 ダルく感じながら、唯一日陰の給水塔の後ろに寝転がる。 その隣に黙って藤原が座る。
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