檸檬

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「ン‥‥けど、井本の周りにいっつも誰か居るし。」そうゆうて、俺の汗で額に引っ付いた髪をなぞる。 「まぁな、俺一人の時ってないからな。‥‥」 抵抗もせずにアイツの膝枕に収まっていると、ゆっくりと俺の髪を梳き始める。 不快感があるわけやなく、どちらかとゆえば‥‥ 心地ええねんや‥‥ 薄く目を開けて藤原を見ると、春の日溜まりの様に微笑んでいた。 その顔にドキマギしながら、 ‥なんやコイツ、何が嬉しいねん。よぉ、わからん。 と思いつつも好きにさせている自分に驚く。 ‥どうかしてんのは、俺か。‥オカマみたいな奴に膝枕してもろて、頭撫でてもろて、気持ちええやなんて‥‥ けど俺‥コイツの瞳好きやわ。綺麗な目をしてる。 吸い込まれそうや。‥‥ 「なぁ‥‥‥い、井本ッて、好きな子居んのか?」 「ン?特に居らへん。‥‥面倒くさいやんか。」 俺の返事に藤原が緊張していた。 「そっか‥‥井本らしいな‥‥」 「藤原はどやねん。お前やったら告ってくる子いてるやろ?」 「えっ?‥無理‥暗いし、あんまし話せんし‥‥」 少し寂しげに笑う。 「そやろか?俺初めて話したけど、中々おもろいやん。 でもお前みたいな優等生が俺とツルンだら、先生受け悪なるで。」 下から見上げてニカッと笑ってやると、嬉しそにクシャクシャの笑顔を返された。 不覚にも、ときめいてしまい悔しくて目を閉じた。 「俺‥お前とツルめるンやったら‥気にせぇへん。 でも‥‥そんなん無理やし‥‥‥」 言葉が次第に落ち込んでいく。 その事が俺の胸を棘の様に刺さってく。 「何で、無理やねん。」 「やって‥俺‥井本に釣り合わんやんか‥‥」 「アハハ、なんやねんそれ。別に付き合う訳やなし。」 そんな俺の言葉に藤原の双眸が歪む。何かを我慢するかのように‥‥ 不意に俺の髪を梳く手が止まる。
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