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起き上がろうと体勢を反る俺をヤンワリと制して、
「このまんまで居ってや‥‥俺、誤解してもらいたいねん。」
声が震えている。
「‥何でやねん。それ、どいゆう意味や?‥‥」
頭を抱えられたままで藤原の瞳を覗く。
「‥引かんとってや。最後のチャンスやと思って‥‥んねん‥‥」
瞳が一層揺れ始める。
‥ちゃう‥‥涙や‥
「俺、井本が‥‥‥好き‥や、ねん。」
涙が俺の頬に落ちる。
「もし、今日井本が一人になったら‥‥全部ゆぉうって‥‥夏休みになったら、俺の事なんか絶対に忘れてしまうやろから。」
俺の頬に落ちた涙を拭い、震える唇で話を続ける。
「井本に釣り合わんのはわかってるし、男同士なんもわかってる‥‥そやけど、ゆうておきたかってん。
ごめん、‥‥きしょいやろ?
ホンマ‥ごめん‥‥」
そうゆうと、俺の頭をゆっくり下ろして立ち上がる。
「話したかったンは、こんなけや。」
淋しげに笑う。
「そうなんや。じゃあ、俺もゆうてええ?‥」
「何を?‥ 」
不思議そな顔をする藤原に
「頭、痛いんやけど‥‥膝、貸してや。
‥‥そんでなあ、寝たら適当に起こしてや‥‥」
下から見上げてニカッと笑ってやると、クシャクシャの笑顔で、
「うん、‥‥井本、」
もう一度膝枕してもらう。
「なぁ、檸檬好きやねん。‥‥食べさしてや。」
「うん、‥‥」
「あっまぁー!‥‥」
「ごめん、甘過ぎて‥‥‥」
「藤原、味見してへんのか?‥」
「うん、‥」
ひと切れとって、藤原の口に運ぶ。
「グゥッ、‥あまっ!‥‥」
「甘いやろ?‥けどな、こうしたら‥‥」
ひと切れ自分の口に入れてから人差し指で、チョイチョイと藤原を呼ぶ。
近づく唇に自分の唇を重ねる。
「ンッフゥ‥‥」
「なっ、丁度ええやろ?‥」
笑ってやると、クシャクシャの顔が真っ赤になって涙が溢れた。
「‥井本、‥‥俺、」
「ン?俺も好きやで‥‥ええ夏休みになんなぁ。」
そうゆうて目を閉じた。
ゆっくりと俺の髪を梳く藤原の手がいつまでも心地良かった。
終わり。
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