たかちゃんとフジワラ

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「ごちゃごちゃゆうてンと、俺のフジワラや。なぁ俺ずっと、‥ずっと待ってたんやで。やっと見つけたのに‥‥俺から、もう‥‥取り上げんとってや‥‥。一人はイヤや‥フジワラとずっと一緒に居るッて、‥‥約束したのに‥‥」 たかちゃんが切なく訴える。 「けどな、俺は一裕でお前のフジワラやないねん。その身体も貴史のやから返してや。‥お前のフジワラはここや‥‥視えへんのか?」 優しく諭すが聞く耳を持たない。 ‥おいっ、フジワラ。お前が何とかしてこいや! これ以上、こじれさすなや。 ‥たかちゃん?訊こえる?俺‥‥ここに来る途中で事故ってしもてん‥‥遅なってごめんな‥ 「フジワラ‥‥なん?どこ‥‥」周りをキョロキョロ探しだすが全く視えない。 ‥その身体からでてや。そしたら、俺が見えるから。‥‥たかちゃん。 少し考え込んだあと、スゥーっと身体から抜ける。それと同時に俺も元に戻る。 いきなり腕の中から俺の気配が消えて一裕が慌てだす。 「っ!貴史‥‥どこや。‥貴史!」 正面から一裕を抱き締める。 「クスッ、目ェ開けてや‥‥俺元に戻れた。」 「貴史‥良かった‥‥けど、ごめん俺全然気ィついてなくて‥。」 「そんな事ないで‥‥一裕は視えへん俺を信じてくれたやん。」 そうゆうて俺は頬を重ねて温もりを感じた。 ‥たかちゃん、俺の事わかる? ‥うん、来てくれたンや。‥ ‥ずっと探してくれてたんや。ごめんな‥随分待たせてしもたな。 ‥ぅうん、逢えただけでもうかまへん。‥あれからずっと俺一人で、寂しかった。 俺‥‥事故に巻き込まれてしもて、約束したのに来られへんかってん。‥気ィ付いたら一人やってん‥‥ フジワラ‥フジワラをずっと待ってたんやで。 ‥うん‥‥たかちゃん、もう一人にせぇへんから。 俺達とは別に気配が二つ優しい風のように揺らいでいる。
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