たかちゃんとフジワラ

13/14
前へ
/384ページ
次へ
話の途中で身体からゆっくりと引っ張り出される感じがした。 ‥貴史、こっちにおいでや。 一裕が俺の手を引いている。 ‥あとは、若い二人に身体貸そか。 ‥アハハ、なんやねんそれは。どこぞの見合いか。 笑いながらも入れ替わる瞬間たかちゃんに声をかける。 ‥大丈夫やから、頑張れ。‥ 「貴史さんありがと。‥俺、フジワラを全身で受け止めるから‥」 18のまだ幼い顔が見えた気がした。 「たかちゃん、俺もっと大事にしてあげたかった。もっと色んな所に一緒に‥‥もっとたかちゃんと‥‥」 フジワラに抱き締められて温かさを感じた。 「ええねん。‥今からずっと一緒やから‥」 ゆっくりとベッドに座る。 ‥アカンって!一裕見んなや。‥ ‥何で?あれ貴史の身体やん。 ‥せやけど、別人なん! ‥クスッ、貴史ッて、あんなとこ感じた? ‥だから、俺やないし‥ ‥ええっ、嘘っ!あんな可愛い顔すんの? えっ?何、あの可愛い声。 ‥見んなやぁー!!俺やないねん‥一裕、見らんとってや‥‥ 一裕の意識が俺を抱き締める。実体が無い分、1つに混ざり合うような変な感じ。‥ 丁度アイスコーヒーにミルクを注いで少しづつ混ざる感じ。‥ ‥ごめん、嘘や。意地悪ゆうて悪かった。あの二人は俺でも貴史でもない。 貴史の事はずっと見てきた俺がわかってる。 ‥俺も一裕の事一番知ってるし ‥クスッ、負けん気の強いやっちゃな 言葉を交わす度に融け合う感覚が心地いい。 実体が無いのに在るような不思議な感覚をお互いに探りあっていた。 ‥何か凄い体験やな。こんなにピッタリくっついてんのに、気が付くと離れそうで‥ ‥ホンマや。貴史が見えてへんのに全身で視える。どの角度の貴史も感じられる。 ‥ぅん、気配が包み込んで1つやのに2つやねん。そんでな、言葉に出来へン想いが流れ込んでくんねん‥‥ ‥あったかいな‥貴史の想いが切なぁなる。 ‥俺も、‥‥ 言葉にすると嘘になってしまうような微妙な想いでさえ、飾りもなく素直なまま、湧水のように滲みて溢れてくる。それがそのまま伝わる。 ‥俺って、貴史にこんなに愛されてたンや‥ ‥一裕の想いもハンパない‥‥ お互いの切ない想いがお互いを包む。
/384ページ

最初のコメントを投稿しよう!

71人が本棚に入れています
本棚に追加