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何かな、「今日は来ぇへンのか?」ってゆう、その一言が胸に刺さってン。
なんてゆうたらええンやろか。‥‥
あぁ‥‥、俺の知らンとこでいつも見ててくれたンや‥‥
俺、独りと思てたけど‥‥見てくれてる人が居るんや。
って、思たら‥‥一裕の事が忘れられへン様になってン‥‥
すっげぇ、気になってしもてん。
けど‥よう話かけんかったンや‥。
しゃぁないやん。‥その雰囲気を壊したなかってん。
変な話やけど、いつまでも見てたかってン‥‥
それから、偶にコンビニなんかでちょこちょこ見掛ける様になって‥
一裕が淋しげにしてる姿なんか見掛けたり、‥‥
でも、俺がいきなり‥声なんかかけたら‥‥
キッショいやろ?
やから、偶に逢えた日はめっちゃ、嬉しかってん。
────────
「まぁ、今に至るって訳や。‥やから、営業で一裕に逢えたんはホンマにラッキーやったわ。
別に後をつけたわけや無いで。」
そう言って心底嬉しそに笑う。
「ごめん。俺、全然覚えてへん。‥‥ホンマにそれ、俺やったンやろか。‥」
「ぉん。見間違えるわけない。‥
だから一裕が倒れた時、迷わず部屋に上がってン‥‥
‥‥やって、こんなチャンス二度と無いやろうし。‥」
頭を掻きながら照れくさそうに俺を見る。
「悪かった。‥一裕の気もちも考えんと、俺の気持ちだけ押し付けてしもて。‥‥
やから、ホンマに心配せんでもええで‥俺、帰るしな。」
‥何でそんな優しい瞳で俺を見れるンや?
俺は、貴史に何もしてやれてないのに‥‥
まだ、‥‥なんにも‥‥‥
黙って貴史を見る。
「そんな顔しぃなや。‥‥泣きそに見えるやん。」
言いながら傍にきて俺の頭を抱き寄せて優しく撫でる。
‥ア、アカン‥‥何でや。涙が‥‥
俺、貴史の事思い出せん事を悔やんでる‥ンや‥‥それに、やっぱり‥‥
‥‥‥‥離れたない。
傍に、‥‥居ってて欲しい。
「一裕、泣きなや。‥‥笑てや。俺、お前のくしゃくしゃの笑顔が好きやねん。」
情けない声が耳を掠める。
顔をあげると、貴史の淋しげな笑顔があった。その自傷気味の瞳を見て‥‥
俺の記憶の切れ端がパズルの様に組合わさった。
まるで、俺の心に一陣の風が吹き抜けて全てを露にしたように‥‥
はっきりと思い出した‥
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