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‥俺、思い出した‥‥知ってる。‥‥憶えてる‥‥
この瞳を‥‥‥‥
‥そうや、あの時の‥‥
「なぁ、それって冬の事やんな。‥‥去年の」
瞳を見つめたまま訊ねる。
「あぁ、‥そこのコンビニの裏の公園や。」
「俺、今、思い出した‥あの時、仕事に行き詰まってて息抜きに夜散歩してたんや。」
俺は思い出しながら言葉を続ける。
「毎晩の様に公園へ行って貴史が猫と戯れてたンを見てた。‥‥すごい、嬉しそに、‥楽しそに笑ってた。‥‥
やから、俺、嫌な事全部忘れられた。
俺、お前と猫が一緒に居るとこ見るのが‥‥幸せそに笑ってるのをみるが‥‥日課になってたんや。‥‥」
貴史が嬉しそに笑い返すのを見て、俺は話を続ける。
「お前と猫がおんなじ瞳をしてた。‥瞳を細めて、‥‥愛しそうに‥‥。
俺、‥それを見て、俺、‥‥」
そこまで言って言葉に詰まる。
‥俺はずっと貴史の瞳に囚われてたンや。
懐かしさを感じるンはそのせいや。‥
‥‥俺、‥‥
今朝逢ったばっかりやのに、離れたないって思ったンは‥‥
逢えン様になるんが嫌やって思ったンは‥‥
‥‥俺が貴史の事を‥‥‥‥
黙り込んでしまった俺に、優しく笑い掛けながら、
「ほらな、やっぱり一裕やったやろ。」
と、心底嬉しそに笑う。
「俺なあん時‥‥‥お前に‥一裕に一目惚れしたんや。嘘や無いで。俺はあの一言で、お前が、誰でもない俺を待っててくれてる。って‥‥‥
嬉しかってん。‥‥ホンマに‥‥」
そして、俺の頬を優しく包み込む様に手をやり、もう一度しっかりと瞳を見つめなおす。
「‥た、貴史‥‥俺な、そんな風にゆうてくれて嬉しいねん‥‥けど、‥そのな、‥‥」
言葉を探しながら伝えようと口を開いた。
「ええねん‥‥勝手に想ってただけや。
男が男を好きになるやなんて認めた無いわな。‥
まぁ‥‥キッショい話や‥‥」
「ちゃ!‥ちゃうねん。‥‥そんなんや無い。キッショいなんて一度も思った事無い。
ただな、今日初めて話をしたやん。‥‥
俺、‥お前の事なんも知らんやん。‥‥
それやのに、‥‥俺、‥‥貴史の事を‥‥
‥‥貴史と、離れたないって‥‥想ってンねん。‥
何でやろか?‥‥貴史が帰るのが怖いねん‥
もう、二度と逢えんかったらと想うと‥‥涙が出るねん‥‥
何でや。‥‥教えてや‥‥‥」
頬を涙がつたって貴史の手を濡らす。
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