71人が本棚に入れています
本棚に追加
出番待ちの楽屋に、バタン! と大きな音を発ててうちの相方が入ってくる。
バンっ!
「‥やる。」無造作に小さな包みを投げつけてくる。
「痛っ!? 何やねんな。‥痛いやろが‥‥」
「やるってゆうてんや。」
不機嫌極まりない口調で応えるのはいつもの事。
仕方なく包みを開けてみると
「‥?‥‥金平糖?」
「高ついたで。‥‥一万五千円や。」
「また、パチスロか?‥戦利品なんやろ? それにしてもまた、高ついたな。」
繁々と包みと相方を眺めながら呟く。
「戦利品やない。配っとった。七夕やと‥‥クソッ!腹立つ!何が七夕や!」
‥へぇ~、粋な計らいやな。天の川の金平糖やん。‥
そんな事を考えつつ、
「クスッ、じゃぁ一万五千円とちゃうやん。」
「俺はあの店にはろたんや。」
訳の解らない言い分に少し可笑しくなる。思わず零れた笑いに、
「ウッサイわ!しゃぁないやろが。‥時間が無かったンやから。」
「アホやなぁ~。たかが出待ちの1、2 時間で何とかなるもんやないんやろ?
行かんかったらええのに。」
金平糖を眺めながら相方を盗み見ると、口を尖らせまだ愚痴をこぼしている。
「何っ!やねん。もう絶対あの店には行かへん。」
井本に1つポツンと棘ができた。‥‥
機嫌の悪いアイツ。
せやなぁ、今朝は起きた時はまだ機嫌が良かったンやけどな。
えっ、何で知ってンねんってか?
そりゃぁ、ねぇ。‥昨夜は俺ン家にお泊まりやったから‥‥って、何を言わすねん。
ってか、俺誰と話してンねん‥‥
妄想の末期やな。‥‥
まっ、ええけど。
カーテンを開けた時に‥‥まぁ、カーテンが外れて落ちたわな。
‥‥それで棘が1つ。
コーヒーが思いの外熱かってキレたんや。
‥‥また棘が1つ。
コーヒーはブラックがええってゆうんでブラックにしたら、苦い!ってキレて
‥‥また、1つ。
タクシーに乗り込んだら運転手の態度が悪かって‥‥
あれっ? キレてへんな。むしろ、楽しそやったな。
そっか、俺が苛々したからな。‥
最初のコメントを投稿しよう!