金平糖

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そうそう、煙草吸ぉうとしてフィルターの方に火を点けてキレてたなぁ。 あとは、 ‥‥腹の調子がイマイチなんにもキレてたし ‥‥靴の紐が上手く結ばれへんのにも、ネクタイがしっくりせぇへんってゆうてはキレてたし ‥‥なんも無い所で躓いてキレてたし‥‥ あげだしたら切り無いな。‥ その度に、棘が1つ、2つって増えて‥‥ 仕事上がりには‥‥コロンって綺麗な金平糖の出来上がりや。 「あぁー!クソッ!腹立つ。何っ!やねん!今日は最悪やン。 何もええ事無いやん。」 ボンヤリと今日1日振り返っていると後ろで悪態を吐きながら着替えを始めている。 「アハハ、しゃあないやん。全部自分でしたことやん。」 「チッ!‥ウッサイわ! 」 挑発気味の俺の台詞で更に苛々が増してきた井本を後輩たちは、自分に矛先が向かないよう息を潜めている。 先に着替えを終えた俺はスマホを弄りながらメールをチェックする。 「飯、どうすんねん。」 珍しくアイツから訊いてくる。 「ン?‥せやな、家に何も無いな。‥」 顔も上げずに返事する俺の目の前に、バンっ!‥と、鞄を投げつける。 「こっち向いて返事せぇや。‥‥」 「‥‥‥」 黙って顔を上げると棘棘したアイツが顔を赤くして激昂していた。 ‥アハハ、赤色の金平糖やな。 「飯!どうすんねん!って訊いてるやろ。」 「あぁー、せやな。食べて帰ろかなって‥‥」 「嫌や!外食は嫌や!!」 ‥ン?今日は別行動でお泊まりなしやったンとちゃうんか。  いつの間に一緒に飯行くことになってンねん‥  まぁ、突っ込んだらまたキレられても面倒やし‥  ここは、スルーしとこか。 「外食は嫌やってゆわれてもな。」 「俺は、腹がへってンねん。」 更に苛々したアイツが机を蹴る。 「う~ん。‥じゃ、何か店屋物かデリバリーで済まそか?」 「チッ!‥嫌や。」 「何やねんな。‥我儘ぱっかりゆうて。ほな、どうすんねん。」 「‥‥飯、作れや。‥‥」 ‥あぁもう、それが人に物を頼む態度かいな。 「帰ってからやと遅なんで。‥‥飯も炊かなアカンし。待たれへんやろ?」 宥めるようにゆうと、 「‥‥かまへん。飯、作れや。‥‥ やって、俺、今日は何もええ事無かってんで。‥ さ、‥‥最後にええ事欲しいやん。 やから‥‥藤原が飯、作れや。」
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