金平糖

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カウンターで待ってると、意気揚々としたアイツがプリンの入った籠を手にレジに並ぶ。 ‥あ~ぁ、嬉しそに笑てからに。子供かよ。‥  でも、ええ顔するよな。‥‥  俺も末期やな。こんな暴君が可愛く見えるなんてな。 クスッ、と笑いが漏れたタイミングで井本が傍にやって来る。 「‥‥笑うなや。しゃぁないやん、プリン好きなんやから。」 「ちゃうちゃう、そんなんや無いから。」 袋に積めて二人で並んで夜の道を歩く。 大の男二人が並んで咥え煙草で歩いていくのも、中々絵になってンちゃうかな? なんて事を思いつつ横を見ると少し機嫌が治ったアイツが、「歩くンがしんどい」って言い出した。 「あともうちょっとやん。」 「‥ぅ゙~!おんぶせぇや。‥‥」 「はぁ~、なんでやねん。」 呆れた顔でアイツを見ると少し恥ずかしそに立っていた。 「‥ええやんか、誰も‥‥居らへんし‥‥」 ‥クスッ、甘えてるつもりなんやろな。 「はいはい、‥‥ほらっ、‥」 アイツの前にしゃがむと嬉しそに背中に貼り付いてくる。 「ちゃんと掴まってンやで。」 「‥ぅん‥‥」 俺はおぶったまんま黙って歩いた。 ‥これも、アイツがゆうええ事の1つなんやろうな。 ボンヤリと思った。‥ 井本の棘が1つ消えていく‥‥ 部屋に着くと満面の笑顔で俺の背中から降りる。 俺は風呂の用意をして声をかけるが、アイツは既にプリンを食べ始めていた。 「また、あんたは飯の前にそんなん食べたら飯食べられへんで。」 「ハハハ、オカンか。」 「ホンマにもう、チャッチャッと風呂はいりや。」 「はいはい、分かりました。‥クスッ。ええなぁ、この感じ‥‥」 小さい声で「ホッとするな‥‥」と呟く。 井本の棘がまた1つ消えていく‥ アイツの後ろ姿を見送って、腕捲りをする。 ‥さぁ~、旨い飯こさえよか。先ずは、お出汁からやな。 俺は手際よく昆布出汁をとりはじめた。
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