71人が本棚に入れています
本棚に追加
カウンターで待ってると、意気揚々としたアイツがプリンの入った籠を手にレジに並ぶ。
‥あ~ぁ、嬉しそに笑てからに。子供かよ。‥
でも、ええ顔するよな。‥‥
俺も末期やな。こんな暴君が可愛く見えるなんてな。
クスッ、と笑いが漏れたタイミングで井本が傍にやって来る。
「‥‥笑うなや。しゃぁないやん、プリン好きなんやから。」
「ちゃうちゃう、そんなんや無いから。」
袋に積めて二人で並んで夜の道を歩く。
大の男二人が並んで咥え煙草で歩いていくのも、中々絵になってンちゃうかな?
なんて事を思いつつ横を見ると少し機嫌が治ったアイツが、「歩くンがしんどい」って言い出した。
「あともうちょっとやん。」
「‥ぅ゙~!おんぶせぇや。‥‥」
「はぁ~、なんでやねん。」
呆れた顔でアイツを見ると少し恥ずかしそに立っていた。
「‥ええやんか、誰も‥‥居らへんし‥‥」
‥クスッ、甘えてるつもりなんやろな。
「はいはい、‥‥ほらっ、‥」
アイツの前にしゃがむと嬉しそに背中に貼り付いてくる。
「ちゃんと掴まってンやで。」
「‥ぅん‥‥」
俺はおぶったまんま黙って歩いた。
‥これも、アイツがゆうええ事の1つなんやろうな。
ボンヤリと思った。‥
井本の棘が1つ消えていく‥‥
部屋に着くと満面の笑顔で俺の背中から降りる。
俺は風呂の用意をして声をかけるが、アイツは既にプリンを食べ始めていた。
「また、あんたは飯の前にそんなん食べたら飯食べられへんで。」
「ハハハ、オカンか。」
「ホンマにもう、チャッチャッと風呂はいりや。」
「はいはい、分かりました。‥クスッ。ええなぁ、この感じ‥‥」
小さい声で「ホッとするな‥‥」と呟く。
井本の棘がまた1つ消えていく‥
アイツの後ろ姿を見送って、腕捲りをする。
‥さぁ~、旨い飯こさえよか。先ずは、お出汁からやな。
俺は手際よく昆布出汁をとりはじめた。
最初のコメントを投稿しよう!