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「あの赤い星は‥‥蠍座か‥」 煙草を吹かしながらふと、昔習った話が頭を掠める。 ──また僕達二人きりになったね。どこまでもどこまでも一緒に行こう。‥‥ 僕はあの蠍の様に皆の幸いの為ならば、僕の身体なんか百ペン灼いてもかまわない。‥‥ ─── ‥そうや、‥俺もいつもそう思とった。 やけどな、俺は皆の幸いの為や無く、藤原の為やったらこの身体が百ペン‥‥いや、千回でも灼かれてもかまへんねんで‥‥ 赤く光る星を見て、涙が頬をつたう。 ‥この後のセリフはなんやったンやろ‥‥ ──けれども、本当の幸いは一体何だろう。── ‥あぁ、そうやった。このセリフや。‥ ホンマにそうやな、‥‥藤原の幸せって、一体何やろか。 前までは、俺と居れるンが幸せやって、ゆうてくれたけど‥‥最近は‥ まっ、ええか。‥‥今日は腹括って来たんやからな。‥‥ そう考えてもう一本煙草に火を点ける。 その頃、店内で目当ての物を物色中の俺の頭の中はパニクっていた。 ‥卵やろ、鰻やろ‥あぁ、プリンや、ほんで‥‥ てんてこ舞いしながらも、卵に鰻、プリン、ホイップクリームにアイスキャンディー、スポロン、鶏肉‥その他色々買い揃えて車に急ぐ。 ‥喜ぶ顔が見たいもんな。さっきの様子やと、何か考え込んでるみたいやし‥‥ けど、俺‥‥たかちゃんの方も心配や。井本の心の動きを全部感じてるからな‥‥ 不安がって無かったらええンやけどな‥‥ 車に戻ると俺に背を向け咥え煙草のアイツが俺に気付き片手を挙げて後ろのドアを開けてくれる。 ‥すっげぇ、やっぱ格好ええ‥‥ 思わず見惚れていると、 「なぁ、プリンこうた?」 「えっ、‥あぁ、買ってきたで。後、酒もな‥‥」 俺の手から荷物を取り後ろのシートに積み込む。 「今日は、‥俺飲まへんで。」 「‥何でや。明日休みやのに。」 「前にもゆうてたやん、俺、自分が自分で無いときがあるように感じんねん‥‥ 違和感ってゆうンかな‥‥変な、擽ったいような、‥切ないような‥‥」 車に乗り込みながら話を続ける。 「‥‥そうなんや、‥‥なぁ、それってどんな時なん?」 「せやな、よぅあるンは‥‥お前ン家にいった時かな‥‥後、二人きりの時とか‥‥ やからな、今日はその原因を‥‥はっきりさせようと思て‥‥」 「‥‥‥」
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