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俺は返事が出来ずに車を発進させた。 確かに二人の時は、半分の時間はたかちゃんと一緒に居る形になるので、井本の記憶が途切れ違和感だらけだろう。 ‥ちゃんと話した方がええンやろか。‥‥と、なるとなぁ、‥信じてくれるやろか。‥‥ はぁー、ビデオカメラでたかちゃんを撮影せなアカンかな‥‥ けど、あんな可愛ええたかちゃんをアイツに見せたら‥‥ 俺やない!って、暴れだされても困るし‥‥ いつもと違う様子のアイツを伺う。 ‥何か知らんが、腹括ってそうやな‥‥ 何を決心してンやろか‥‥ と、考えながら家路を急いだ。 家に着き車から荷物を下ろし始めると珍しく「半分持とか‥」と、袋を掴む。 「大丈夫やで。」 「ン‥でも持ちたいねん‥何かお前の手伝いがしたいねん。‥‥ってゆうか、‥‥まっ、‥ようわからん。」 と笑うその顔はたかちゃんがいつも「かじゅくんのおてつだいしゅる。」と言って笑う顔そのものだった。 部屋に入るなり、袋をテーブルに置きリビングのソファにドッカリと座る。 ‥クスッ、こうゆう所は井本様やな‥‥ 俺は取り敢えず風呂の用意をして声をかける。 「先に入る?」 ボンヤリとしていた井本が我に返り 「ン‥後でええ‥‥」 「そっかぁ、‥ほな、飯の用意するな。‥」 キッチンにたちアイツのリクエスト通りひつまぶしの用意をする。 お出汁をとり、茶漬け風でも食べれるようにする。 ‥今日も腹の調子ええ事ないみたいやしな。 鰻巻きはフワフワのが好きなのでとびっきりフワフワに仕上げる。 仕上げに三つ葉と紅生姜を添える。 ‥ぅん、きれいに出来たで。 箸休めに蓮根の金平と白菜の浅漬けを小鉢に盛り付ける。 そして無意識に林檎を兎さんに剥く。 テーブルに並べて「用意出来たで。」と、窓を開け放ちベランダで咥え煙草を吹かしながら苺を眺めている井本に、声をかける。 が、心ここに在らずみたいにボンヤリしている。 「どないしたン‥」 余りにいつもと違うアイツに戸惑う。 「ン?‥‥あぁ、いやなこの苺摘み取ろうと思たンやけどな‥‥ 何や、‥摘み取られへんねん。‥ 変やろ、‥何でか知らんが、‥‥ 摘み取らせたい相手が居る気がしてな。‥」 「‥俺の事か?」 恐る恐る聞き返す俺に背を向けたままで 「いや、ちゃうねん‥‥多分、‥もっと、違う相手や。‥」 そして聞こえるか聞こえないかの声で 「きっと大切な相手やろぅな。‥‥」と呟く。
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