熱帯夜

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部屋に戻り着替え一式を用意していると、‥ピンポンっ‥と、インターフォンが忙しなく鳴る。 ピンポン、ピンポン、ピンポン、ピンポン! 「誰っやねん。この急がしい時に‥‥」 用意している手を止めて玄関先に行くと、ドア越しに井本の姿が‥‥ 「早ょ開けろやァ!」 ‥何で、さっき先に帰ったンとちゃうん? ドカッ‥ドンッ! と、ドアを蹴りつつ、 「何っ、してンねん!」 「アッ、ハイっ!」 「遅っいわ、アホ。ちゃっちゃとせんか。‥‥てか、暑っつぅ。何やこの温度。‥」 部屋に入るなり噴き出す汗に双眸が歪む。 「ごめん‥‥」 「よぉ、こんなんで我慢してたな‥‥」 「やって‥‥お前に迷惑かけたなかったし、‥他の奴の所に泊めてもらうンも嫌やったし‥‥ ‥しゃぁないやん‥‥」 その言葉を訊き、フッと笑い俺の頭をポンポンと撫でた。 「まぁ、ええ。‥俺腹減ってンねんな。何かないん?」 「何かって‥‥ごめん‥何もない。‥」 冷蔵庫を覗きながら答えると、アイツはベランダに行き煙草に火を着けそよいでくる風を待っていた。 「‥しゃぁないなぁ、どっかで食べて帰るか。」 「えっ? 飯は俺やろ? 何か作るって‥」 「ええょ。‥今日は、お前も疲れてるやろうし‥ ‥バテてンやろ?」 「えっ‥‥」 ‥もしかして、俺の身体の事心配してくれてンのか? もしかして、‥俺が買い物してお前ん家に行くの見越して‥先に迎えに来てくれたとか‥‥ ‥‥まさかな、‥ そう思いアイツの顔を覗き見ると、ホンノリと頬が赤みをさしていた。‥‥暑さのせいやなく。‥ 「‥何‥‥食いたい? 俺、あっさりしたもんがええ。」 ソッポを向き、ベランダにしゃがみこんだまま訊ねる。 「そうやな、何しよか。‥」 返事しながらも用意を済ませ戸締まりのチェックをする。
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