keyword‥番外編♪ヽ(´▽`)/

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「やっぱ、酒は必要やな。‥月を愛でながらの一杯って格別やよな。」 テーブルの上には酒のアテばかり並ぶ。それを見て、 「まっ、こんなもんやろ。‥」 俺は眠っている井本に声をかける。 「井本‥‥お月さまでてんで。」 「‥う‥ン?‥‥何や寝た気がせんなぁ。」 「クスッ、‥‥(そりゃぁそうやろ。‥今までたかちゃんが起きてたんやからな。)」 「何、笑てンねん。」怪訝そな顔で俺を見る。 「いや、‥まぁ、ええやん。‥今夜はお月さまで一杯やろや。」 俺はアイツの目の前の器に酒を注ぐ。 窓から眺める月は真ん丸で綺麗やった。 「綺麗な月やな。‥」アイツは器の酒を飲み干す。 「せやなぁ。‥満月と中秋の名月とが一緒やからな。‥‥いつもより綺麗やな。‥」 それから黙ったまま酒を酌み交わす。‥ 呑みながら、俺はふと、‥ 「暮雲 収め尽くして清寒溢れ  銀漢 声無く 玉盤を転ず  此の生 此の夜 長くは好からず  明月 明年 何れの処にて看ん。‥‥‥」 「?‥何や、それ。」 「中秋の月‥‥や。  日暮れ時、雲はすっかり無くなり心地よい涼風が吹いている。  銀河には音も無く玉の盆のような月があらわれた。  こんな楽しい人生 楽しい夜、しかし永遠に続くものでは無い。 来月は、来年はどこで此の中秋の月を見ているのだろう。‥‥」 黙って訊いていたアイツは、 「ピッタリな詩やな。‥‥しっかし、お前‥‥よう知ってンなぁ。」 「ン?‥まぁな、こないだ何かで読んだとこやねん。 何かな、‥自分の事みたいでな。‥‥」 少ししんみりとなりアイツの顔をみる。アイツは器の酒を飲み干して 「せやなぁ。‥永遠に続く訳無いよな。‥ でもな、俺は続くって信じたいな。‥」 「‥信じてもええンかな。」 ポツリと呟くと、俺の方を見て、 「ン?‥ええンとちゃう。やってな、来月も来年も‥‥場所は違っても‥‥例え一緒や無くても‥‥ 俺、お前と‥‥きっと此の月を眺めてると思うねん。‥」 「‥ぅん。‥」 俺は眼を閉じてアイツの肩に頭を預けた。
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