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まだ‥‥夜が明けない真っ暗な朝早くアイツが起き上がり、まだ微睡みのなかで揺れている俺の横で着替え始めるのを、‥何か不思議な想いで‥‥まるで、‥映画を見ているかの様に虚ろに眺めた。
知り合ってからもう2ヶ月は過ぎたのに、まだ俺はハッキリと貴史に意思表示が出来ていない。
‥そう、まだ‥‥
貴史はあれから何かにつけて週に最低二、三回はやって来ては泊まる。
‥別に約束なんかしてへんのにな‥‥
ただ夕方に訪れて、
一緒に食事して、
TVやDVDなんか観て、
他愛もない話をして、
風呂に入って、
そして、‥‥
‥‥ただ、一緒に眠るだけ。
ただそれだけの事。
友達でもなく、恋人でもなく。
ましてや、‥セフレでもない。
‥でも、コイツは俺の部屋にやって来ては嬉しそな顔で笑って過ごす。
約束なんかしてへんのにな‥‥
俺の視線に気付いたアイツが傍にきて
「まだ‥寝ててもええんやで。
ごめんな。起こしてしもて。‥」
そう言いながら髪を手櫛で梳く。
心地よい感触に眼を細めて
「ううん、‥大丈夫や。‥貴史、今朝はいつもより早いんやな。」
「‥まぁな。」
「朝飯作ろか?」と起き上がりかけた俺をヤンワリと制して
「ええよ。‥どっかでモーニングでも食うし‥‥」
何故か歯切れが悪く聴こえる。‥
「‥そう、‥‥」
俺は不満気に応える
「ごめんな。‥一度部屋に戻らなアカンから‥‥」
曖昧な返事と、気間づい雰囲気を漂わせて
「今夜来てもエエか?‥」
「かまへんよ。‥」
珍しく約束をして、俺と視線を合わす事なく背を向けて出ていった。
‥まぁ、正しくは‥‥家に帰って行ったんや。‥
俺の知らん所に‥‥‥
部屋には、気間づい雰囲気と不信感‥‥そして、原因の解らない濁った感情が漂う。
‥そう言えば俺、アイツの事何も知らんし。
住んでる所も人間関係も、
一人暮らしなんか、彼女居るんか、‥
全然知らんし。‥‥‥
ぼんやりと、一度ちゃんと聞かなアカンな。‥
思わぬ時間に眼が冴えてしまったもんだから、二度寝は出来なかった。
起き上がって部屋を見回すと、否が応でもアイツの身の回り品が目に留まる。
それほど俺の生活に馴染んでいるってゆう事なんだろう。
珈琲を淹れパソコンを立ち上げる。メールをチェックして今日1日の段取りを考える。
‥そやな、急ぎのは昨夜仕上げたし、今日は特にってのはないなぁ‥‥朝から真面目にしたら昼で終了や。‥
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