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‥終了や。‥‥
その言葉が心に引っ掛かる。‥
そんなザワザワした気持ちをかき消す様にもう一度パソコンに眼をやる。
画面には ’冬至‘ の文字。
‥そっかぁ今日は冬至なんや。‥
‘ん’ の付く食材がええんやなぁ。‥そういやぁアイツ蓮根好きやったな。‥
南瓜も定番やし、‥‥後は柚子湯もええなぁ。
そんな些細な事を考えている時間が今は、一番幸せだ。
滅多に無い約束事。‥
アイツは何があっても破る事はなかったから‥‥
だから、夕食を考えるのが知らず知らずの内に熱が入る。
そして、‥喜ぶ顔が浮かんで思わず微笑みが零れる。‥
‥でもまぁ、‥ホンマにアイツの事何も知らんな。
蓮根と玉子とお揚げさんが好きってくらいや。
何も思いつかへんや。
‥‥は~、何で情けなくなんやろか?‥‥‥
落ち込みがちな気分を一新するために顔を洗い、仕事に打ち込む。
滞りなく仕事も進み昼になりぼんやりと洗濯物を眺めながら日向ぼっこをする。
‥なんや、主夫みたいやん。
と、クスッと笑う。
夕方になり洗濯物を取り込み商店街に買い物に行く。
八百屋で南瓜と蓮根、銀杏を買いおまけに柚子を頂いた。
後は色々と買って、何だか得した気分で家路を急ぐ。
夕陽が綺麗に反射しているアーケードの途中で、営業中らしい貴史の姿を見つけた。
‥やっぱ、スーツ姿似合うよな。
アイツは店先で営業スマイルをして頭を下げていた。
恐らく1つ契約が取れたのだろう。
気付かれないように後をつける。
‥ムッチャ驚くやろうな。
声をかけようとした時に横から女の人が現れて腕を掴み路地に入る。
俺は気付かれないように電柱の陰に身を潜める様に隠れてしまった。
「やっと捕まえた。あんたは今まで何しててン」
「えっ?何って仕事やん。」
「いっこも帰って来んでどうすんねん。」
「何が?」
「まだあの部屋で住むン?」
その言葉に
‥もしかして、貴史一緒に 暮らしてる人が‥‥
目の前が真っ暗になる。
そして貴史は女の人に引き連れられて行ってしまった。
‥嘘やろ、‥いや、マジやろな。そうやんな、あんなけ格好良かったら一人って事は無いわな。‥‥
一人言をブツブツ呟き部屋にたどり着き、機械的に夕食の仕度を始める。
南瓜に包丁を入れようとして手元が狂い指を切る。
「痛っ。‥」
‥絆創膏は‥‥
一番目の付く場所にアイツのおき薬の救急箱が置いてあった。
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