存在

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いよいよ本番や。‥ アイツを見ると緊張しているのがまるわかりだ。 ‥相も変わらず緊張して‥‥ ってゆうても俺もやけど‥‥ 何年経っても本番前、出番前は独特の緊張感があんねん。 「ンッ!」と気合いを入れる前にいつもある想いが過る。 相方の顔をみて、‥‥ ‥‥やっぱ、俺、コイツに惚れてるよな。 心の中で痛感する。 もう、コイツの事を考えて夜が明けてくる事にも馴れて、名前を呼んで胸が切なくなる事にも馴れた‥‥‥ けどな‥‥‥ いつも考えてしまうんや。 お互いを知り尽くしたと思ても、まだまだ俺の知らんお前がおるねん。 何かなぁ‥‥‥ まぁ、ダチとして過ごした昔も、相方として過ごしてる今でも‥‥ あまり変わりない気がする。‥ でもや、これからもきっとお前は俺の傍に居るンやろな、‥‥多分、‥‥ ちゃう、居って欲しいねん。 喩え、遠く離れてしもたとしても、‥時間や距離に関係なく俺とお前は繋がってる‥‥‥‥ って‥‥思いたいンや。 いつかきっと重なり合うと‥‥‥ だから、ピンの仕事も頑張れるンや。 俺は昔からお前の無口な強さに憧れていたんや。 なんにも言わへんお前の心の中に入りたかったんや。 お前のその情熱に触れたかったんや。 やから、‥‥ 俺は‥‥‥お前に‥‥‥ 「漫才しよや!」って誘ったんかもしれん。 いつかお前にとって俺がかけがえのない存在になるために‥‥‥ やから、今、一緒に舞台にたてる事に誇りをもって‥‥‥ 「ンッ!よっしゃぁー!行くで、ついてこいや。」 俺は今日もアイツの前を歩き舞台にあがる。‥ ‥‥秘めたるアイツへの想いと共に‥‥‥ 終り──。
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