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かなり早めに来たのに、ベンチではかず君が本を読んで待っていてくれた。
「ムッチャ早いやんか。」
「おっ、貴史。」
俺の声に顔を上げ、‥視線を反らす。
そう、いつもの事。
昔から、‥
俺は隣に腰掛け、態と顔を覗きこむと怒ったように軽く頭を小突かれる。
「のっ!覗くな!」
「何でなん?」
そう言って更に身体を近づけると、ズリズリと離れていく。
更に俺がすりよると、かず君が離れていく。
何回か繰り返すとおのずとからベンチからかず君が転げ落ちる。
「‥いっ、て。‥」
「大丈夫?」
慌て俺もベンチから落ちてしまいかず君の身体の上に抱き抱えられる形で覆い被さる。
「‥グゥッ、‥」
鈍い声がして眉間に皺が入る。
目の前にはかず君の唇‥‥‥
辛そうな瞳から優しい笑みが浮かび、
「大丈夫か?」
心配気に声をかけるかず君の唇がゆっくりと動くのを不思議な感覚で見ていると‥‥ 吸い込まれるかの様に‥‥‥
唇を重ねてしまった。‥‥
「///‥‥」
頬を紅く染めたかず君が俺の名を呼ぶ。
「‥貴史‥‥」
弾かれた様に起き上がり、
「ご‥‥ごめん!‥‥俺、その‥‥ごめん!‥ 」
俺は一目散に駆け出した。
‥アホや、‥なんて事してもたンやろ。あ゙ぁ゙ー!もう、顔あわされへんやんか。‥‥ 絶対変に思てるやろな。‥
でも、かず君の唇‥‥いやいや、そんなんやなくて。‥
せっかく、昔みたいに一緒に居れたのに‥‥
「グスッ、‥‥ごめんな、俺‥‥もう会わす顔があらへん。‥」
公園の東屋で座り込んでいると頭を小突かれた。
「なんやねん、いきなり走り出して‥‥怪我は無かったんか?」
「‥嘘やろ?何で、‥」
涙目の俺に
「アホやな、ちょっとたまたま唇が当たった位で逃げんなや。‥」
‥ちゃう、‥たまたま何かやないねん。
「そんなに、嫌か?‥‥俺の事、‥」
不安気に問うかず君‥
「ちゃうねん!‥嫌やない!‥‥それに、たまたまやない!」
「‥?!」
「俺‥‥ごめん!‥引かんとってな‥‥俺が自分から‥‥したねん。‥
俺‥ずっと、‥ずっとかず君が好きやねん。」
驚いたまんまのかず君は何も言えず俺の腕を掴んだまんまだ。
「‥ごめんな、もう会わへんから‥‥」
そう言って立ち上がった俺の腕を引っ張り抱き締められる。
「‥イヤや、俺は。‥イヤや。
何で勝手に決めんねん。 ちっとは人の話聞けや!」
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