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相変わらずの困った様な、怒っている様な微妙な顔をしていた。
‥もしかしてやなくてホンマに照れてんやんか。
「いっ、痛い。‥」
「かず君、俺今な、すっげぇ嬉しいやけど。‥
でもな、肝心の言葉が聞きたいねん。‥
なぁ、ゆうてや。」
更に微妙な顔をする。
「あっ、‥それは、‥‥その、‥‥」
「さっきはあんなに、格好良かったのになぁ。
何でなん?‥‥俺のやっぱ‥‥ウザいとか‥‥」
俺はわざと下を向いて落ち込んだふりをした。焦っているのが手に取るようにわかる。
‥アハハ、なんか愉しいかも。
「ちゃっ、ちゃうんや。‥そうやない。‥‥ 俺は、ホンマに貴史が大事やし、‥その、‥そのな、‥すっ‥‥すっ‥好きやねん、けどそんなん簡単にゆうてや、‥‥困らしたくないしな、‥そのな、‥‥すっげぇ束縛してるみたいやし、‥‥
貴史、‥きっと迷惑してんやろな、‥って思たら、‥‥貴史、‥俺に愛想つかしてしまう
んやろな、って‥‥
‥離れてまうんやろな、って‥‥
」
段々と声が小さくてなり、
「‥だろ、‥‥だってや、女の子と仲良ぉしたり、俺の知らない友達とか‥‥
俺の知らん部分が増えていくばっかで‥‥‥
でもな、‥お前が楽しそやったら、‥‥幸せやったら、‥‥それでも、ええかな、って‥
でもな、‥‥諦める事もでけへんし。‥‥」
俺は話を訊いて胸が苦しくなってきた。
‥おんなじやったんや、‥‥
「ほなな、いっつも言葉が途切れるんは、‥‥そんなん考えて話してたん?」
かず君は小さく頷く。
俺はこれ以上引っ付けない位傍に寄りかかった。
「アホやなぁ、‥‥直接ゆえばええやんか。
俺は、そんなん気にせぇへんで。‥」
「でもや、‥‥」
「ゆうてや。そんでないと俺‥‥なんも解らへんしや、俺かてかず君に、好きやってゆえん様になるやんか。‥なっ。
やから、俺の事みてや、‥そんでもっと傍に居っててや。」
俺は哀しくもないのに、‥‥多分切なくて涙が滲んできた。
「貴史、泣かんとってや。‥‥俺どうしたらええか解らんようになるやん。‥‥」
「ほなっ、‥‥こんな時は黙って抱き締めてや。‥‥なぁ、‥‥抱き寄せんと、‥ぎゅってしてや。
‥お願いやから。‥‥なっ。‥」
「‥ん。‥」
俺はキツく、強く、‥‥そして包み込むように抱き締められた。
そして、耳元で囁いた言葉を噛み締める。
‥もう、迷わへん。絶対に離さへんから。
‥愛してる。
───終り
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