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なるべく気持ちを逆なでしないように藤原の好きな声色で
「うっさい言わんとちょっと「うっさい!
聞きとうない!」‥って、なぁ顔ぐらい
上げろや‥」
髪をすきながら耳元で囁くように
「なっ‥大きい声出さんから‥一裕‥‥
顔見せて‥」
上目遣いでチラッと顔を上げるも直ぐに
「うっさい‥‥‥」
自分でも厭になる性格してんねん‥
けど、俺だけのけ者なんが悔しくて、
アイツにも井本にも腹が立って
二人して解り合ってて‥‥
二人の間に何か在るようで嫉妬して‥
そんな想像してる自分が惨めで情けなくて哀しくて
‥泣きたい訳じゃないのに
涙が止まらへん‥
《一裕》って呼んだ声が胸の中で弾ける。
けど、頭の中じゃ
こんなに優しいンはきっと後ろめたいンや
アイツと特別に何かあんねんや
‥ って叫んでる
だって、
泣いてるやつは嫌いやってゆうてたやん
ウジウジしてる俺に優しい訳あらへん!
‥ って叫んでる
膝を更に固く閉じ、両腕に力が入る。
「あのな‥大概にしとけやぁー!人が折角
優しにゆうてんのに!なめとんかー!」
「大きい声出さへんって言うたやン‥
もぅ放っといて帰れや‥」
「アホか‥ホンマにええンか‥‥帰っても」
「‥帰れや‥」
いきなり髪の毛を掴んで頭を上げる。
「いっ‥痛い!何すん‥‥ウッ‥ンウッ‥」
唇を塞がれて、文句が飲み込まれた。
驚いて顔を見ると、
「ウダウダ悩むな!泣くな!ホンマに情けない」
辛そうに双眸を細めながら、涙を拭ってくれた。
「‥‥」
「中々止まらんな‥も一回したら止まるか?」
黙ったまま頷く。ゆっくりと顔が近づく‥髪に手を入れられ、何度も啄むように優しく‥角度を変え‥‥
‥優しさに包まれていく。
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