元カノからの手紙

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「‥あっ‥」 不意に頭を抱き抱えられて撫でられる。そして、背中をポンポンと擦られて 「考え過ぎはアカン‥聞きたい事は聞け。言  いたい事は言え。‥お前は今、一人やな  いやろ‥何の為に俺がおんねんな‥」 「‥‥」瞳を真っ直ぐ捉えられて離せない 両頬を挟まれて 「ハミゴにされたと思ってンやろ?  アイツとできてるって思ってンやろ?」 「‥何で‥解るん?」 不思議そに訪ねるまん丸とした目の藤原の顔がおかしく、そして可愛く思えた。 涙でグシャグシャの顔を愛しいと思った。 頭に手をやり、クシャクシャとかき乱しながら最上級の笑顔で 「どんなけ一緒に居ってお前だけを見てき  たと思うねん。‥ホンマに  ‥‥好きやねん‥で」 滅多に言わん台詞(好きやねん)こんな時にサラッと口に出されると‥ 井本以外、ナンも要らなくなる。 《好きやねん》言葉の重さを抱きしめる。 《好きやねん》心地よく頭の中で繰り返す 温かい涙が溢れてくる ソレを見て、 「難儀なやっちゃ‥ほら‥顔を拭け」 箱ティッシュを渡される。「きったない顔してからに‥」 「貴ちゃん‥」 「やから‥貴ちゃんってゆうな!  って鼻水拭け!!」 慌てて顔を拭う。 ‥デッカイ子供やで 拭きすぎて真っ赤になった顔を見る。 「アハハハーなんちゅう顔や」 頭をクシャックシャッされる。 ほらっ‥と、ビールを渡され無言で飲み始める。 先ほどとは違う空気‥  心地良い‥安心感‥   少しだけ残る不信感‥
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