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‥ナンや、気ィ付いてたンや
走ってく後ろ姿に、
「藤原ーー!!ジュース代ー!!!」
泣きそになりながらも振り返る間の抜けた顔。
‥ナンや俺、こんな顔まで可愛く見えるわ
叱られた犬のようにトボトボと戻ってくる。
「チッ‥ナンやねん。普通このタイミングでゆうか
ね‥」
「聞こえてンでぇ~ぶつくさぬかすな!」
大きな身体が、ビクッとして
「はいっ‥」
‥アカンわ‥ホンマにかわいなぁ
ポケットからオタオタと財布を取り出し小銭を探す。
目の前に座り込み、
「はい!お釣り頂戴!‥」
500円玉を出している。受け取らずに、視線を手からアイツに向けて
「釣りないなー」と、笑ってやった。
「チッ‥やなやっちゃ‥ええよ、いらんわ」
もう一度手を突き出す。
「ソンなんアカンわ~彼女でも彼氏でもないの
に奢ってもらわれヘンやん」口角をあげて笑いながら言うと
「忘れてってゆうたやン。やから‥」
何事解らない顔の藤原の手を、ぐぃッと引っ張り態勢を崩し上体にのる。
目と目が合い、手から500円玉が音を小さくたてて転がる。
俺は指で藤原の眉から耳にかけて、ゆっくりと2回なぞる。緊張している時の藤原の癖。
‥ナンや俺、こんなんまで覚えてンや
冷静な俺が頭の中で囁く。
クスッと笑いが洩れる。
そのまま視線を唇に落とし、指でなぞる。
「返事もさせん気やったんか?」
「‥‥?」
「ゆうだけゆうて‥ズルいやっちゃな」
「井‥本‥エッ‥‥ぁっん‥う‥ンッフ‥」
なぞった指を離し、ゆっくり唇を舐めていく。チュッと口の端にキスを何度も落としながら
「ソンな‥ズルい奴に‥絶対‥好きって‥
ゆわんから‥」
顔を離し、ニヤッと笑う。
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