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松岡女学園、初等科。
例に漏れず白い学園帽を被り、初々しく頬をピンク色に染めた新入生達。
同級生となる彼女たちと肩を並べて校門をくぐった、9年前の春。
今となっては乱れつつある学園規律も、当時は折り目正しい『お姉様方』の手で守られていた。
「ごきげんよう」
教えられたばかりの挨拶を振りまいて歩く。
白帽は初等科の証。
白帽の無い黒髪を見る度、私もあんなふうにしとやかな女性になれるだろうかと胸を踊らせた。
「ごきげんよう、お姉様」
何度目かの挨拶だったと、思う。
一際広く枝を広げた桜の木の下に、彼女はいた。
「……ごきげんよう」
黒鳥の羽のように艶やかな髪と、黒真珠の瞳。
黒鶫のように思慮深い瞳で私を見つめ返した彼女が、白帽を取った新入生だと知ったのは、その後間もなくのことだった。
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