4738人が本棚に入れています
本棚に追加
/388ページ
入り口である両開きの扉は開いていて、そこに立つと否が応でも視線が突き刺さる。
食器を乗せたトレーを落としそうになる奴や、
口に入れたつもりの食いもんを、皿の上に取りこぼす奴。
カシャーンと音がした方を見れば、フォークが誰かの手から滑り落ちていた。
(おぉい……)
「凄いね、……2人共」
と、他人事な日和。
「見られすぎだ、日和」
と、早速睨みを利かせる志貴。
「お前もかなりだぞ、志貴」
互いが他人事の様に言うのが可笑しい。
だけど、日和の他人事は何とかした方が良さそうだ。
何でこうも視られるのか、ホントにワカってるのか怪しいもんだ。
「なぁ志貴。先ずは身近なトコロから取り急ぎ危機管理が必要だな」
「「あぁ、まったくだ」」
(……ん?)
志貴の応えがダブって聞こえた気がした。
変だな……と志貴を見れば、視界に入る長身の男。
志貴の向こうに立つ白衣姿の雅紀センセが、「よぉ」と笑う。
直後、身体の右側に人の気配。
香りでワカる。
( っ、なんで?!……瑠一っ?! )
「……チッ」
よりにもよって何で今なんだと、周囲を見渡し舌打ちする。
.
最初のコメントを投稿しよう!