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それから程なくして……
「ねぇ、重くない?もうちょっと持とうか?」
「大丈夫だよ、このくらい。
男の筋力嘗めんな」
俺が3つ、春菜が1つ。
そんな割合で買い物袋を提げながら男子寮へと続く道を歩いていた。
買ったのは、調味料一式に安価な保存食、後はまぁ……歯ブラシとか。
なんかまるで同棲が始まるみたいだな。
「あ、包丁とかフライパンは?」
「それなら最初に使いそうなモンまとめて持ち込んだから、多分そん中に…」
可愛らしいギャザースカートを揺らし、春菜がてくてくと一歩引いて続く。
隣に並んで欲しいが、そのことを以前話題に上げたところ……
『だっ、だだだだめっ!
私、絶対変な顔してるもんっ……!』
……なんて言われた。
どっからどう見ても美少女だよ、バカヤロウ。
「…………」
左後ろを歩く春菜を一瞥し、何とかして隣に並んで貰う為の策を練る。
あ、普通にこうすれば良いか。
俺は左手に提げていた買い物袋を右手に預け、そのまま空いた左手を差し出した。
右手には計3つの買い物袋がのし掛かったが、この際関係ない。
「春菜……」
「ん?なぁに?」
春菜が後ろから軽いステップを踏んで、俺の顔を覗き込む。
「……手…繋がないか?」
…………。
「…………」
「…………」
……あれ?ノーリアクション?
「……は、」
「“は”……?」
何だ?
「恥ずかしいから……ゃ…」
あぁ、もう死のう。
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