第1話:膝

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  「えーっと……じゃあ確認。  春菜は俺と手を繋ぐのが恥じゃないのか?」 「…はっ、恥でも何でもないよっ!私だって繋ぎたい…し……」 全俺が胸の内で泣いた。 良かった、フラれたワケではないらしい。 「けど…幸くんと手ぇ繋いだりなんかしたら……絶対ニヤけちゃう……ょ?」 ヤバやべぇ、今すぐ抱き締めたい。 上目遣いだし、その見上げた目も涙が零れんばかりに潤んでるし。 つーか待って? そんなんで繋ごうとしなかったのか? 「そんなん、春菜は可愛いんだから多少ニコニコしててもおかしくないだろ?」 子をあやすような声音で語り掛けながら、春菜の柔らかな黒髪に手を伸ばす。 うは、サラサラっ! 「でっ、でもでも!幸くんは恥ずかしくない!?手ぇ繋いでるだけでニヤニヤしてる女の子が隣にいたら……──────」 「じゃあ繋ごう、今すぐ繋ごう」 あぁもう、イイコ過ぎる。 俺は春菜の反論を遮りながら、彼女の小さな手を掴んだ。 肌触りの良さそうなカーディガンの袖から、ちょこんとはみ出たそれを。 ……まぁ、こんなことを断りも無くすれば、いくら春菜でも憤慨するワケで、 「だっ、だめだめだめ!汗ベッタベタだよ!?心臓バックバクだよ!?私死んじゃうよ!?良いの!?」 「それでも繋ぎてーの。  ……そうだな、じゃあ寮に着くまで手を繋がせてくれたら、何でも言うこと聞いてやる。 ──────それでどうだ?」 「………ゎぅ…」 そう言った途端、春菜の抵抗が止んだ。 現金なヤツめ。 「…ぅん………約束だからね…?」 死んでも守ろう。 そう胸に誓いました。 萌え死ななければ、の話だが。  
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