とにかく彼は女の子を抱えて俺の部屋の前に来た

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「開けてよ! マジ今ピンチなんだってさ! 人生で一番! 授業中お腹痛くなったときよりもピンチなんだ!」  外で何か喚いている。きっと変態だろう。春になったらでるって先生も言ってたし。  決して小学生からの腐れ縁である友人ではない。あるはずがない。ましてやその友人が幼女を誘拐したなど。あってはならないし、あったとしても決して認めてはいけないのだ。 「なぁ! 掛矢ぁ! 助けてくれよぉ!」 「俺の名前を呼ぶな変態が! というかお前誰だ! 近所迷惑というか俺が非常に迷惑だ! 別の部屋に行け! 俺が迷惑にならないように遠くへ行って自殺しろカス!」  変態という名の神崎勇人は、ドアを叩く行為を止めて、今度はすすり泣きを始めた。鬱陶しい。耳障りだ。というかなんで誰も外にいる変態に消火器を投げつけない。  俺は警察を信用できないから連絡はしない。憎らしいことに外にいる変態はそのことを知っている。すすり泣く声は先程の叫び声よりも一層響く気がした。
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