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恐怖で、力が出なかった。膝が、ガクガクと震える。うまく、立てない。
けれど、黒ずくめの何者かは、僕の襟を引っ張って、僕を無理やりに張り付けにした。
「……やめろ」
僕の声が、むなしく室内に響きわたる。だが、そう言ってやめてくれるのなら、苦労はしないだろう。黒ずくめは、鞭を取り出すと、僕を打った。
「ぐあ!」
腹を打たれただけなのに、全身が痺れるように痛む。こんな経験をしたのは、初めてだった。ものすごく、痛い。
黒ずくめは、振りかぶると、更に、僕の身体に鞭を打ち込んだ。
△▼△▼△
解放されたのは、僕の全身が痣だらけになった後のことだった。牢獄に放り込まれると、そこには、すでにリンの姿があった。
「……カイ」
リンも、かなり憔悴した様子だった。全身から血の気がひいていて、肌が青白い。
僕は、身体を引きずりながらリンの元にずりよっていくと、その身体にしがみついた。そして、言う「これは一体」。
リンは、最初、ぶるぶると震えていたが、やがて決心したように口を開いた。
「……こうして、私達をここにつなぎ止めようとしてるんだよ」
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