牢獄

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「……カイ」 僕の上から、声がかかってきた。そして、リンは、拘束されてある両手で、僕を抱き締めようとした。けど、できなかった。 「泣かないで。……カイ」 暗い牢獄に、ただリンの言葉だけが反響した。 △▼△▼△ 夢を見た。そこで僕は、リンと一緒に、この牢獄を抜け出していた。そこは、見渡す限りの草原で、僕らは手を繋いでそこに立っていた。とても、清々しい気分だった。 「カイ、起きて、カイ」 僕は、肩を揺すられて、目を覚ました。どうやら僕は、体育座りをしたまま寝てしまったようだった。顔をあげると、不安そうに僕の顔を覗きこむ、リンの緑色の目がある。 「朝ご飯が来たよ。一緒に食べよう?」 「……いい。食欲ない」 身体を動かすと、鞭で打たれた傷が傷んだ。こんな様では、とても朝御飯など食べられるはずがなかった。けれど、リンは僕にすがる。 「ね? 一緒に食べよう? お腹、空いてるでしょう?」 「……だから、空いてないって言ってるだろ」 「駄目、食べなきゃ」 再び顔を沈めようとした僕の頭を持ち上げ、リンは、僕と目線を合わせて言った。 .
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