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「妖精っていうのはね、めったなことがないかぎり、いや、めったなことがあっても、他種族の前に顔を出さないんだ」
それを話しているリンの顔は、どこか寂しげだった。
「でも私のママはね、テンっていう人形の種族に恋をしちゃったんだ。いわゆる一目惚れってやつ。それで、禁忌を犯してその人との間に子供をつくったの。それが私」
リンは、一拍置いて続ける。
「それで私には羽がないんだ。妖精の象徴である羽が。そしてテンでも妖精でもない私は、皆に見捨てられてはぐれものになったの。膨大な魔力を持ったまま」
「……リン」
「そしてそれに目をつけたピア国王が私をここに閉じ込めたってわけ。君と同じ兵器としてね」
リンが、そんなに辛い過去を持っているとは、思いもしなかった。僕は、改めてリンの顔を凝視してみた。そこに映る彼女は、どこか疲れているようであり、どこか悟っているようでもあった。
「……リン」
「でも、カイはそんなこと気にする必要ないよ」
リンは明るい笑顔をつくって言う。
「私は私で、カイはカイなんだから」
僕は、彼女が強い心の持ち主であることを、改めて知った。
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