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黒ずくめは、牢屋の鍵を空けると、音もなく中に入ってきた。そして、手を前にかざす。その手の中には、いつの間にかリンの手錠に繋がった鎖が握られていた。いつかリンから聞いた、魔力を封印するための手錠だ。
「……いや」
リンが、声を発した。
「いやあああああああ!!」
リンが、初めて抗った。でも、それは黒ずくめには通用しなかった。彼女は、いとも簡単に連れていかれようとしていた。
「助けて!! 助けて!! カイ!! 私、私化け物何かにされたくない!!」
「あ、あ」
結局僕は、何もできずにいた。声を発することすら、出来なかった。僕はただただ、リンへと手を伸ばしていた。
「いやあああああああ!!」
リンは、連れていかれた。しばらく呆然としていた僕の元に、もう一人の黒ずくめが現れた。僕は、ああ、僕もリンのようにされるんだなと、その時に悟った。
僕は、抵抗することなく、ただただ黒ずくめに引き摺られていった。そうされるだけ、僕は憔悴していた。もう、どうしようもなかった。
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