5人が本棚に入れています
本棚に追加
気が付くと、僕は外にいた。空を見上げた。それは、どこまでも漆黒に染め上げられていた。これ以上にない分厚い黒い雲が、太陽の光を遮っていた。
そして、目の前遥か向こうには、沢山の人影が見えた。いや、人ではない。多分、ピア王国のシノ族と争っている、イニア族だと思った。
僕の腰には、一本の剣が帯刀されていた。鞘は、真っ黒に染まっていた。恐らくこれは、魔剣なんだろうなと思った。
どんどんと、相手の軍勢が迫ってくる。気が付くと僕は、走り出していた。
一面、何一つ木々が生えていない。そこは荒野なんだろうなと、僕は思った。僕は、イニア族の一人と向かいあうと、その人間に酷似した者に向かって、剣を振り抜いた。
黒い基線を描いて、イニア族の一人の首が吹き飛んだ。恐らく、死んだ。そう思った。
遥かかなたで、巨大な光の柱が立った。あちらでも戦闘が行われているんだなと、僕は思った。恐らく、僕と同等の力を持った誰かが。
誰かが。そう、誰かが。僕の頭が、ちくりとした。忘れてはいけないことを、忘れているような気がした。
敵の軍勢は、僕を取り囲んだ。そして、剣を構えたまま、一斉に僕へと斬りかかってきた。僕はその最初のうちの一人の攻撃を避けると、その心臓に魔剣を突き刺し、下に潜りこんで全員の攻撃をガードした。そして、魔剣に力を込めて、こう言った。
「魔剣」
.
最初のコメントを投稿しよう!