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そう、広くない檻だった。檻の外から流れこんでくる薄い光が、この檻の中を薄ぼんやりと照らしている。
少女は、最初の内、僕の顔を、まじまじと見つめていた。そして、ふと気が付いたように「君、人間だ!」と、声を漏らした。それは、そうだと思う。僕も人間だし「君も人間」。
少女は、あれ、と表情を固めた。そして「それは違うよ」。
「私は妖精。あ、少し違うかな。でき損ないの、妖精、かな」
どうやら、僕の神経は、知らない間にそうとう病んでいたようだった。僕の心理状況は、一体、どうなっているんだろうと、その時の僕は思った。少女は続ける。
「私、嬉しいな。こんなところで、人間と出会えるなんて」
「まあ、もうすぐお別れになるだろうけどね」
少女は、あからさまに、キョトン、としていた。僕は、続ける。
「だってこれ、夢だろう?」
「夢? 何言ってるのかな、君? これは、夢じゃないよ? 現実だよ。現実」
嫌にリアルな夢だなと、僕は思った。そこで僕は気付く。夢なら、覚めるのが、やけに遅い。僕は、立ち上がると、近くの壁に強く頭を打ち付けた。ゴン。
「……痛い」
「君、何やってるのかな? もしかして、そっちけいの人?」
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