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どっちけいの人か、僕にはわからなかったが、今は、それどころではなかった。
「なんだ、これ」
「ねえ、名前教えてよ? 名前」
でき損ないの妖精の声が、遠くから聞こえてくる。これは、夢じゃない?
僕は、自分の姿を、改めてみた。それは、先ほど布団に入った時の寝間着とは違い、汚いぼろきれになっていた。少女の姿も、僕と同じく、ぼろきれだ。
「なんだ、これ」
僕は、改めて、そう言った。状況が、全く飲み込めなかった。
「ねえ、ねえってば」
でき損ないの妖精が、肩を揺すってくる。
「どうしたのさ、急に」
「お前、誰だよ」
僕は、彼女から一歩身を引いて、そう言った。
「私? 私は、リンだよ」
「いや、そうじゃなくて、お前一体、だれ、なんだよ」
「え」
でき損ないの妖精は、困ったような顔をした。しかし、そんな顔をされても困る。困っているのは、こちらの方なんだから。
「ここ、どこだよ」
「ここは、ピア王国の、地下牢獄だよ」
地下牢獄? それよりも、ピア王国って?
「待て、少し待ってくれ。少し落ち着く」
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