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僕は、リンの顔を伺いながら、そう聞いた。
「とっても素晴らしいところだよ」
リンは、遠いものを見るような目をして、そう言った。
「まず、自然がものすごいんだ。ホント、ものすんごいんだよ? 木々が、山脈が、森林が、もう、とってもすんごいの」
「へえ。僕も、その世界を見てみたいな」
「なら、見にいこうよ」
「え?」
リンは、はしゃぎながら、「いつか、ここを出れたら、二人で、見に行こう」。
「……うん」
一瞬、ここから出られるのではないかと勘違いした僕は、しばらくして、ようやく返事を出せた。
「見に行こう」
「うん。見に行こう」
リンは、輝くほどの笑顔で、僕にそう言う。僕は、苦笑いするしかなかった。とてもじゃないが、この牢獄から出られることができるなど、想像できなかった。
すると、急に、リンの、輝かんばかりの笑顔が、止んだ。
「来る」
リンは、そう言った。
「え?」
「早く! 部屋のすみに隠れて!」
リンは、そう言うと、僕を部屋のすみに追いやり、牢獄の檻から僕を守るようにした。
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