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と、言い放っていた。
「危なっ!?刺さる刺さる!」
私は無言のままフォークを向けていた。
「わかった!わかったからフォークを降ろせ」
そう言って指輪に掛けていた手を放し、両手を挙げた。
私はそれを見届けると、静かに降ろし、魚に突き刺す。
一時の沈黙が流れた。
リョウヘイは食事に手をつけていたが、私の様子を伺っているのがわかる。
私はというと、黙々と食事をしていた。そして、何気に海へと飛び込んでいく夕日に目を向ける。
「あ!?……あっ!」
リョウヘイが声を挙げたので、顔は夕日に向けたまま視線だけリョウヘイに移す。
「何?」
「いや、何でもない」
「だから何?」
「だから何でもないって」
ジーっと、無言で見つめる。
「どうせ私が夕日を見てるのを良いことに、指輪を外そうとしたんでしょ」
リョウヘイはビクッ、と体をさせると、
「…はい」
と、弱々しく答えた。
「外そうとしたことは謝る。ゴメン。…でも、もう大丈夫だ」
大げさに両手を広げてみせる。
「?どういうこと?」
「こういうことだー!」
そう言って、指輪に手を掛けて力を込めた。…が、いっこうに外れる気配がない。
「なっ」
と、笑ってみせた。
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