ロビー

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「ふーん」 リョウヘイは旅館のロビーに置いてあるソファーに座り、手にした『必見!!日本の島』のガイド本を読んでいた。 パラパラと捲っていると、折り目がついていた勿体島のページに止まったから読んだのであって、決して読みたいからではない。 「遅いなぁ~」 頭をボリボリと掻くとまた、ペラペラとページを捲り始める。 「ゴメーン」 「あ~、やっと戻って来た」 ジュンはリョウヘイに小走りで近づく。 一緒に観光に出掛けようとロビーまで来たのはいいが、忘れ物を思い出し部屋に取りに戻っていた。 「待った?」 「あぁ、すげぇ待った。ってか、何忘れたの?」 「んっ?おサイフ」 ピンクでキラキラのハートが散りばめられた財布をハンドバッグから取り出して見せる。 「はあ!?忘れ物ってソレかよ。無くても大丈夫だったのに。どーせ俺が払うんだし」 リョウヘイは大袈裟に自虐(?)を言う 「ダメよ。何かあったら怖いじゃない」 「何かって?」 「部屋に泥棒が入るとか」 「迷子にタクシー代渡すとか」 「リョウヘイが財布を落とすとか」 「ホームレスにあげちゃうとか」 「チンピラに絡まれるとか」 「恵まれない子供に募金するとか」 「私に高級ブランド品を買ってお金が足りなくなるとか」
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