第十三章 天獄の管理者

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しかし全身鎧を着込んでいるのは不思議に思う。ここは誰も来ないはずなのにまるで常に戦っているような姿をしている。   闘刃君もまだ偽剣を構えている。   「オウルイーターに吸い込まれた者は二度と生きて出られない。大体は落下に伴う衝撃で終わるが、稀にお前達のような奴らもいる」   奴は脇差しから銀色の大剣を手にし、剣身が赤く輝き出す。   「何千年も生きていると暇でな。これまでの奴らはその暇つぶしにもならなかった。お前達はどうかな?」   大剣を地に突き刺し、灼熱の炎が私達がいる全域に広がる。   おかげで明るさは取り戻したが、檻のようにもなってしまった。   「……若菜、挟み打ちだ。お前の素早さなら奴よりは機敏に動ける。あの鎧にあの剣だ。細かい攻撃はないだろう。正面は俺がやる」   「うん」   剣身を肩につけ、奴は歩き出す。目で合図し、私達は二手に別れた。   闘刃君はまともに突っ込んでいる。既に奴の範囲に入った。   「……ほぉ」   奴の振りかぶりは予想を超えて速かった。しかし闘刃君は最初から防御する作戦だったにちがいない。赤く輝く大剣は炭素結界に阻まれた。   その間に隙ができる。私は間髪入れずに真後ろから刺突した。   「何だその攻撃は?」   「……!?」   貫けない。いや、それどころか電撃も効いていない?   「死にさらせ!!」   槍を片手に握り、私ごと炎の中へ投げ飛ばす。   瞬時に槍を手放し、ギリギリのところで身体を踏ん張らせる。   しかし私の武器は炎に飲まれてしまう。   「多少は動けるか。お前も中々粘る」   均衡している。闘刃君の炭素結界と赤く輝く大剣が。   「なるほど。縦の衝撃には耐えるか。ならば……」   その瞬間私は見た。自分の攻撃がいかに弱々しいものだと実感するほどの荒々しい刺突。   闘刃君の結界を突き破り、軽々と弾き飛ばす。  
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