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しかし阻止しなければならない理由はあるか、と言えばそうでもない。
「ねぇ闘刃君、何を話しているんですか?」
横から顔を出して若菜が聞いてくる。そういえば森国語で喋っていたな。わからんわけだ。
「それは……」
ふと考える。若菜は人間に対してどう思っているのだろうか。俺の考えと若菜の考えが一致しているとは限らない。
若菜は俺や吉宗、蓮と違ってあの戦争を経験していない隠力者だから、比較的人間には寛容な方だ。場合によってはまたどこかで……。
「それはって何がですか?」
無邪気に見えるその顔はまだどこも汚れていない。俺の意思でこれを汚す事はできる。若菜はまだあの日から思いを変えていない。
「古代生物についてだ。頭が混乱してもいいなら説明しても構わないが」
「んー、難しい話なら止めときます」
はぐらかしてしまった。若菜には何も真相を話していない。知らないままだ。
「そのお嬢さんは伴侶かね?」
視線を前にしたままルガードは変な話題を振ってくる。
「珍しく俺を慕っている仲間だ」
「ほぉ、仲間ねぇ……」
他の言葉が思いつかない。昔の後輩というのもあるが、ルガードには意味がわからないだろう。
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