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私も奴に会うよりも先に彼に会いたい。
「ようやく来たか、お前達」
噴水の側にあるベンチに座っていたのはザードだった。先にいても特におかしくはない。ザードは境界を素で通れる数少ない、というより魔生物では唯一の存在だ。
噴水という涼しさとフードという暑苦しさが両方見れて妙な感じがする。
「蓮花といったな。奴に会わせてもいいが、その部屋の鍵はデュランが持っている」
「つまり、どちらにしろ先にあの男の所に行く必要があると」
用意周到な奴だ。何か条件でも挙げるつもりなのか。
「……鍵を使わなくても扉を開ける自信はあるが、従おう」
「強気な女だ。シーザ、後は俺が案内する。例の任務に行け」
「わかりましたわ。ではロゼお姉様、失礼致します」
頭を下げ、踵を返して噴水場から離れていく。
任務ってなんだろうか?デュランの狙いがいまいちよくわからない。
それもついでに聞けばいいか。
「こっちだ」
先導する役割になったザードが金音を鳴らしながら研究所の中を進んでいく。
私はともかく、蓮花をデュランと会わせて本当に大丈夫なのか。何せ彼が重傷を負ったのは元を辿れば奴のせいだ。まだちょっとの面識しかないが、蓮花はどちらかと言えば口よりも手が先に出る。
冷静に対応してくれればいいのだが……
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