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研究所に変わったところはない。向かう先も所長室。何か彼と初めてここに来た頃を思い出す。
あの時とは事情が違う。今回はあくまで交渉だ。
「着いたぞ。失礼のないようにな」
ザードが拳の裏で軽く扉を叩き、開ける。
奴の顔が見える。あの特徴的な金と黒が混ざった髪。生きているのか死んでいるのかわからない無の目。
状況反射だ。まだ五メートル以上離れているのに近付くのを躊躇う。
「ようやく来たね。ザード、下がっていいよ」
「了解」
ザードが扉を閉めて出ていき、この空間に私と蓮花と、そして奴だけが残る。
双方が黙り込み、静かな時間が流れる。緊張の一瞬。
「ラスターの力を完全に解放したみたいだね」
「どうしてそれを!?」
ラスターの解放自体誰にも話していない事なのに。
「君を造ったのは誰だと思ってるんだい?それくらい姿を見ればわかるよ。ま、それより」
奴は蓮花の方に首を回す。
「お初にお目にかかります、蓮花君。魔生物研究所所長のデュランです。君の事はザードから聞いているよ」
「お前が魔生物を造った張本人か」
「いかにも。そこにいるロゼ、そしてシーザも私が造ったモノ」
蓮花はまだ冷静だ。だが交渉次第では荒れるかもしれない。
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