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奴は手に一つの鍵を持っている。まるで餌みたいに。
「わかっているよ。君達はこれが欲しいんだよね?」
「……詳しい条件は?」
私がこちら側に戻るだけで本当にいいのか、奴がそんな事で引き下がるとは思えない。
「私の理想郷の手伝いをしてくれればそれでいい。勿論宗吉君もだが」
「……理想郷とはなんだ?」
「食物連鎖の逆転。魔生物が圧倒する世界の創造だよ」
空気が変わる。蓮花の目が明らかに厳しくなった。
しかし私自身は予想していなかったわけじゃない。魔生物は人間を喰らう。より強力な魔生物ならば今の人間との立場を逆転させることも不可能ではない。
「準備は着々と進行している。魔生物の王となる器も現れた。駒も整いつつある。後少しで人間は恐怖と絶望を永遠に味わうことになる」
その意見に賛成か反対か、問われるのならば難しい。強いて言うなら私は彼を失わないほうに依る。あんな思いは二度としたくない。
「さっきから聞いていれば魔生物の支配だのなんだの……しかも宗吉を利用する?ふざけたことをするな」
「お気に召さなかったかな?だが、宗吉君の生死は私側にある。もとより対等な交渉ではないのだよ」
悔しいが奴の言う通りだ。私達は一度負けている。その時点で今の状況は至って普通の光景だろう。
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