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私が知らない空白の期間に何かがあったのは確かだ。彼がその間中意識不明のままなのも納得いかない。
「デュラン、鍵を早く。条件は飲む」
「うん、素直でよろしい。宗吉君は地下一階の集中治療室にいるよ」
鍵を手渡しで貰い、私は直ぐに部屋を出た。長くこの空間にいると気がおかしくなる。
隣にいる蓮花はまだ放心状態のようだ。状況の変化についていけていない。そんな感じがする。
「ど、どういう事なんだ?宗吉が重傷で闘刃が自分から敵に?なのに宗吉はここで治療を受けている?」
「……彼はガデスと戦って血を流しすぎた。意識が戻らないのもそのせいだと思う。治療されているのは彼がデュランにとって利用価値があるから。闘刃については私もわからない。でも最後までガデスと戦って私と彼を逃がしてくれたのは闘刃だった」
階段を下りる足どりが重い。恐れているんだろうと思う。顔を合わせると色んなものが感情として出てきそうだ。
「宗吉を復活させる方法はないのか?」
「そこはなんとも言えない。実際に見るしか……」
地下に行き、数ある扉の中、厳重で強固そうな場所にたどり着く。
鍵穴に刺し、ゆっくりと回す。開いただけの金属音に心臓が高まる。心音が早い。本当にこの先に彼が。
一度深呼吸をしてノブに触れ、その扉を開く。
明かりのない暗闇の空間に私は少し安堵した。すぐに直視しなくて済む。
もう一度呼吸を整え、横の壁を手で探り、部屋の明かりをつけた。
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