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目についたのはベッドだった。真っ白のベッドには白い毛布がかけられており、その近くには見たこともない機械が並んでいる。
私と蓮花はそのベッドの傍まで近付き、全貌を目に映した。
「…………」
彼が、いる。口に特殊なマスクをつけ、腕には細い管が通されたまま静かに眠りについている。
私も彼女も口を開こうとしない。初めて彼の現状を見て、動揺してしまっている。
彼と同じ高さにしゃがみ、その腕を触ってみる。
生きているはずなのに、死んでいるかのように冷たい。
これが今の彼。
「……ハハッ、おかしいな。あの宗吉がこんな事……に……」
彼女の口が震えている。見たわけじゃない。喋り方でわかった。
私は……?
違う。悲しいのではない。これは純粋な怒りだ。自分に対する不甲斐なさに憤りを感じている。
私には闘刃のように癒す力は持っていない。私が彼のためにできる事は戦うことしかないのに。それすらも満足にできなかった事が悔しい。
「会えて満足したか?」
開いた扉に背を向けてザードが立っている。彼と最後に戦ったのはこの男だった。つまり。
「そう睨むな。宗吉はお前を逃がしてすぐに意識を失った。俺が手を下したわけじゃない」
「……どうしてまだ目覚めない?」
「闘刃によれば隠力の酷使もあるらしい。精神崩壊寸前で自動的に精神と肉体のリンクを切ったのだろうと。一度切るとそれを繋げるのに時間がかかる。よって肉体的には回復しても意識は戻らない」
そのリンクを再び繋げることはできないのか?そうしなければ彼はずっとこのままに。
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