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決定的なモノとなったのは次のデュランの話だった。
「闘刃君は君達三者の中で一番人間を嫌っている。だから快く協力してくれている。宗吉君はどうかな。彼はロゼのためにできる事をしたいようだ。ロゼは魔生人だから魔生物を喰らう事でしか生きながらえられない。どういう事かわかるかな?彼もまた魔生物を滅ぼす事を望んでいないのさ」
「わ、私は……でも……」
もしこれを善しとすれば帝国を裏切る事になる。かつて師が創り上げてきた帝国を。
そんな真似を私ができるのか?
「直に万国は魔生物によって制圧される。その情報は森国にも伝わり、一大戦争となる。その時には隠力連合とは同盟を結べばいい。幸い上級魔生物は君達と人間の匂いで区別をつけられる。新たな世界の誕生さ。君達は差別なく生きる事ができる」
「……考えさせてくれ。今すぐ結論は出せない」
「勿論。私はいつでも歓迎するよ」
地響きが起こり、話は即座に中断される。戦いが激しくなっているようだ。ひょっとしたら流人も来ているのかもしれない。
「……戦いの様子は見たいかい?」
「危険じゃないのか?私は大丈夫だがお前は人間だろう」
「強力な電磁波を研究所周辺に張っている。だから正門手前十メートルくらいなら問題ないよ」
「……」
姿を見せれば討伐協会側から敵と見なされる。それに流人にも勘違いされる恐れもある。
しかし安否だけは示しておきたい。
「あまりに愉悦な殺し方ならばすぐに止めに入る」
「いいよ。君に見てもらいたいモノもあるしね」
デュランの妙な一言を残したまま渦中となる正門まで走り、騒音の最中、私は扉を一斉に開けた。
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