第十七章 違えた道

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元になっていたのはあの男。   見た瞬間に異様な雰囲気を感じた。身の丈三メートル程でさらに筋骨隆々。どう解釈しても人間の域から外れている。   『弱き者は去れ。儂は容赦できぬ。挑む勇敢な者はかかってくるがよい。その気概、完膚なきままに潰してやろう』   何か言っている。ただ、構えている事を考えれば予想はできる。   剛の構え。もう確信していいだろう。あの大男は羅刹流の使い手だ。   まさか俺と姐さん以外でまだいたなんて。   「……ラルフ?」   俺を下ろして不意に人型に変化し、何やら妙な動きをしている。身振り手振りで行動を教えてくれているようだ。   「俺が囮になるからあの技で……なるほど」   俺が理解したのを見ると、短剣を握り、ラルフは地を這うように走り、大男までの距離を詰める。   それに習って躊躇っていた討伐者達も向かっていく。   『勇気ある者達よ、力がどういうモノなのか、とくと見るがよい』   討伐者達が武器をまさに振ろうとした時、剛の構えから大男は荒れ狂うように戦い始めた。   得物を一切持たず、己の肉体のみで討伐者達をまるで風に舞うゴミのように軽々と殴り倒していく。   それでも引き下がらないのは流石選抜討伐者と言えばいいのか。   しかし勇気と無謀は違う。
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