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だが彼はそれを隠力でかわし、次々と人間達の首や胴体を切断していく。
『残念残念。そんな玩具じゃ俺は倒せないって』
斬られた頭部を蹴飛ばし、さらに斬った胴体の心臓に何度も剣を突き刺す。
『ヒッヒッヒ、あ~楽しい楽しい。こんな楽しい戦いはないな』
私が知っている彼とは明らかに一線を画している。本当に彼は嬉々とした表情でやっている。
『吉宗、新手が来る。南へ移動するから急げ』
彼の動きは仲間からの忠告でようやく止まる。あれは……おそらく闘刃だろう。雰囲気が今とほとんど変わっていない。
『うぃっす。また殺せるね。今日は何体やれるかな~』
『快楽殺人も程々にしとけよ。任務が最優先だからな』
彼らは赤い炎の中へ消えていく。私はさらに跡をつけようとしなかった。それよりも彼のあの顔が忘れられない。
十一才だ。あんな年齢であんな表情をするなんて。幼い感じに見えたからこそ衝撃が大きかった。
「えっ……」
景色が歪み、別のモノに変わっていく。
集落だろうか。山に囲まれた土地に簡素な家が多く点在している。さっきとは違い、長閑な風景に見える。
『ハッハッハッ、宗吉よ、そんなものか?』
『まだまだ!!』
彼と……あとは体格の大きい筋肉質の男が戦っている。というよりは稽古をつけてもらっているのか。
しかし彼は木刀を持っているのに対し、筋肉質の男は素手でやっている。それでも筋肉質の男が圧倒している。
『お前は強い相手にはいい表情をして挑んでくるな』
『当然!!その方が燃えるし。弱い奴だといつもの癖が出ちゃうしね』
あの不気味な表情とは異なり、明るく元気に振る舞っている。これが私が普段見ていた彼だ。
想像もつかない。どちらも彼のはずなのに、最初のは偽者じゃないかと疑ってしまう。
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